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レビュー予定書籍(随時更新)

 

睡眠心理学

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ぜんぶわかる脳の事典―部位別・機能別にわかりやすくビジュアル解説

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よくわかる発達心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

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エッセンシャルズ WISC-IVによる心理アセスメント

エッセンシャルズ WISC-IVによる心理アセスメント

  • 作者: ドーン・P・フラナガン,アラン・S・カウフマン,上野一彦,名越斉子,海津亜希子,染木史緒,バーンズ亀山静子
  • 出版社/メーカー: 日本文化科学社
  • 発売日: 2014/03/25
  • メディア: 単行本
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子ども~若年期における、不確かさへの耐性の無さと不安、心配の関係について

 本日は、不確かさへの耐性の無さ(Intolerance of Uncertainty、以下IU)と不安、心配の関係性に関するメタ分析論文がacceptされて早期公開されているようなので、取り上げてみたいと思います。紹介されている論文で引用されているIUの定義を抜き出すと「明瞭な手がかりの不在や不十分な情報の存在といった不確かさの知覚によって生じる嫌悪的な刺激への耐える能力の無さ」という感じになるでしょうか。要するに「曖昧な状況・十分な情報が無い・少しでも見通しが立たない」への苦手さに関する個人差ですね。

 IUは日本ではまだあまり有名ではありませんが、心配と強く関係することが示されており、全般性不安症を形成する基盤ともされています。全般性不安症に対する認知行動療法において治療標的にされることも多いです(この辺りも記事にしたいですね)。今回紹介する論文は、IUと心配、そして不安の関係について研究が進んだこともあり、メタ分析で改めて見てみようじゃないか、というものです。ちなみに、メタ分析の方法論の細かい点や出版バイアスの検討に関しては本記事の目的と少し逸れるため割愛いたしました。気になった方はご自身で論文を確認いただければと思います。また、メタ分析研究の方法論詳細について知りたい人は 

メタ分析入門: 心理・教育研究の系統的レビューのために

メタ分析入門: 心理・教育研究の系統的レビューのために

 
はじめてのメタアナリシス (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト)

はじめてのメタアナリシス (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト)

 

 

新版 メタ・アナリシス入門 ─エビデンスの統合をめざす統計手法─ (医学統計学シリーズ)
 

 

の3冊がわかりやすいかなぁと思います。上2つは初心者向き、最後の丹後本は上級者向けです(紹介記事も書きたいですね)。

 

紹介論文:

Intolerance of Uncertainty, anxiety, and worry in children and adolescents: A meta-analysis - ScienceDirect

 

序論:

・IUは心配や全般性不安症の基礎概念として知られており、実証研究も多いが、近年うつなどの他の精神障害者も高く、多様な障害の根本概念なのではないかと考えられるようになった。

・実際、メタ分析においてもIUの高さは全般性不安症・強迫症・大うつ病性障害の3つの障害を有する者において高い値であった(大うつ病性障害はDSM-5では名称が消えたが、訳のためそのまま記載)。また、他の研究でもうつや不安と強く関係することが示されてきた。

・IUと不安・心配の関係については成人ではよく検証されているが、若年者の結果を統合したものはまだない。

=メタ分析

 

結果:

・IUと不安の平均効果量は r = .60と大きな効果量であり、不安の分散の36%をIUで説明できる。

・IUと心配の平均効果量は r = .63と大きな効果量であり、心配の分散の39.63%をIUで説明できる。

=子ども~若年者においても、成人と同様にIUと不安、心配とは強い相関関係がある

 

 この結果から、成人だけでなく、子どもや若年者においてもIUは不安や心配と強く関連していることが示されました。序論内でも紹介されていましたが、子どもでもIUの個人差はあり、今回の結果を踏まえても基礎モデルは成人と大きく変わらないようです。一方、limitationにも書かれていますが、今回のメタ分析はIUと不安の相関関係だけであったり、IUの測定が質問紙のみであることなど、工夫が必要な点はいくつもあります。今後、さらにIU研究が進むことを知見ユーザーとして祈っています。

子ども~若年期の間で、言語能力と非言語能力に性差はあるか?

 最近出版されたIntelligence誌で面白い論文があったので紹介します。内容としては「認知能力に性差はあるか」という、昔から存在するあるあるネタなのですが、それに加えて発達上の変化を見ているのが面白い点です。言語能力・非言語能力に性差がある年齢はあるのでしょうか。あるとしたら、それは発達によってどのように変化していくのでしょうか。

 

Sex differences in non-verbal and verbal abilities in childhood and adolescence

 

序論:

・認知能力に関する性差の研究は数多く行われてきたが、その差は微々たるものであった

・メタ分析による言語・非言語能力の性差の検討も、結果が一貫していないことが多い

・大きな性差がある認知能力として空間認知があり(男性の方が得意)、生後3か月ごろから差が出現するとの報告も

・その原因として、テストステロンという性ホルモンが影響している可能性(しかし結果は一貫していない)

 

目的:

・言語能力と非言語能力において、2歳から16歳までの間に性差が存在するか?

→発達によってこれらの性差は変化するか?

 

方法:

主要な医学的診断がついていない、母国語が英語のイギリスの双子サンプル。サンプルサイズは各年代で4959名~14187名まで様々

WISCを始めとして、各年代によって言語・非言語能力は異なる検査が使われています。

 

結果:

・非言語能力・言語能力共に2、3、4歳時において有意な差が見られ、それ以外の年齢では差は見られなかった。

・ただその差はかなり小さく「無視出来る程度の」差である

 

とまぁ、こんな感じです。他にも双子研究ならではの諸々が性ホルモンの観点から検討されているので、興味のある人は読んでみてください。ただ、今の段階では「幼児期に認知能力の性差はほんの少しだけあるが無視できる程度であって発達とともに無くなっていく」というのが結論のようです。この辺りは

madoro-m.hatenablog.com

にも紹介されている結論と変わりないですね。つまり、現状として言語・非言語能力に性差は無いと言っても良いのではないでしょうか。ただ序論にあったように、空間認知能力はまだ議論の余地がありそうです。

 

また面白い(臨床に役立つ)論文があれば随時紹介していきます。

オペラント心理学入門―行動分析への道

著者:

ジョージ S.レイノルズ (著)

目次:

1 実験的行動分析入門
1-1 オペラント条件づけとは?
1-2 行動の説明
1-3 行動記述のための基本概念
1-4 レスポンデント条件づけ
1-5 オペラント条件づけ
2 オペラント条件づけの研究
2-1 研究(research)とは?
2-2 研究の目標
2-3 実験的分析と生物個体
2-4 実験動物
2-5 実験装置
2-6 プログラミング装置
2-7 累積記録器
3 オペラント行動の獲得と消去
3-1 レスポンデント行動の獲得
3-2 オペラント行動の獲得
3-3 依存性・随伴性・迷信行動
3-4 オペラント行動の消去
4 オペラント行動の刺激統制
4-1 弁別刺激
4-2 刺激般化
4-3 弁別と般化
4-4 注意と刺激統制
4-5 刺激統制の限界
5 条件性強化子
5-1 正の条件性強化子と負の条件性強化子
5-2 条件性強化子の形成
5-3 反応と刺激の連鎖
5-4 条件性強化子の強度
6 正強化単一スケジュール
6-1 間欠強化スケジュール
6-2 スケジュール特有の反応遂行 その獲得と維持
6-3 4つの単一スケジュールで維持された反応の消去
7 多元・複合・並立強化スケジュール
7-1 多元強化スケジュール
7-2 複合強化スケジュール
7-3 並立強化スケジュール
8 レスポンデント行動とレスポンデント条件づけ
8-1 無条件性レスポンデント
8-2 条件性レスポンデント
9 嫌悪統制 逃避・回避・罰
9-1 逃避
9-2 回避
9-3 罰
9-4 その他の嫌悪条件
10 情動と動機づけ
10-1 情動とは?
10-2 情動の実験的研究
10-3 情動と動機づけの関係
10-4 オペラント条件づけにおける動機づけ

 

日本語で書かれた本の中では

madoro-m.hatenablog.com

と並んでよく行動分析学の教科書として用いられる本書。評判と違わず、行動分析学に関する基礎的な内容が網羅されており解説も丁寧である。

 1章では実験的行動分析学の入門として、三項随伴性やオペラント条件づけとレスポンデント条件づけの違い、強化子の種類(一次性強化子、二次性強化子)などのごくごく基本的な事柄がやや簡潔に述べられている。2章ではオペラント条件づけに研究の基礎として、実験動物や各動物によってどのような実験装置が使われるかを図解で解説している。またプログラミング装置や累積記録器の説明も1ページに満たない程度の分量で説明してある。

 3章ではオペラント行動の獲得と消去について解説されている。獲得部の内容としてはシェイピングの理屈とその実際的な手続きが中心である。単純な基礎知識だけでなく、正の強化による活動性増加やエサを強化子として機能させるための摂取制限、迷信行動についても解説されている。消去については、消去の効果に影響を与える変数として強化スケジュールがあること、自発的回復と呼ばれる現象があるといった程度の内容のみである。4章では弁別と般化を中心に解説している。基礎的な弁別と刺激般化の解説だけでなく、反応般化についての説明もなされている。反応般化についてはあまり解説されている書籍が少ないため、貴重である(といっても、分量は少ないが)。また、注意とオペラント行動の関係についても述べられている。ただ内容については

madoro-m.hatenablog.com

の方が詳しいため、本個所に関してはこちらを参照することを勧める。

 5章では条件性強化子について、どのように形成されるか、反応と刺激の連鎖について、その強化子の強度や般性強化子の存在について紹介されている。6章は強化スケジュールについて、間欠強化スケジュールにおける比率と間隔、変動と固定スケジュールの違いについて解説した後、そのスケジュール特有の行動傾向について解説されている。具体的にはVI、VR、FI、FRの4つのスケジュールの違いや各スケジュールに影響を与える要因について解説し、各強化スケジュールがどのような特徴を持っているかを丁寧に記している。強化だけでなく、各スケジュールによって獲得された反応の消去に関する説明も1ページで解説されている。7章では複雑な強化スケジュールとして多元スケジュールや複合強化スケジュール、並立強化スケジュールの解説が詳細になされている。

 8章はレスポンデント条件づけについて解説されている。ここでの解説についても

madoro-m.hatenablog.com

の本の方が詳細に解説されているため、レスポンデント条件づけについて詳しく知りたければこちらを読んだ方が良いだろう。 

 9章は嫌悪刺激が関連する行動として、逃避・回避行動の獲得と消去について、また罰(弱化)の解説がなされている。10章は情動と動機づけとして、主に情動を中心に基礎的な解説がなされている。

 本書の特徴は、強化スケジュールの解説であろう。単純な強化スケジュールから複雑な強化スケジュールまで、基礎的知識だけでなく事細かに行動傾向やあまり知られていないスケジュールまで多種多様に解説がなされている。基礎・応用問わず行動分析を学ぶ人であれば、必ず1回は読むべき一冊である。一応タイトルには入門と題されているが、行動分析学について初めて学びたいという人向けの書ではない。一通り行動分析学学習心理学の基礎を学んだ者が読んで、初めて価値が出る一冊であろう。

 

おすすめ度:80点

対象者:行動分析学の知識が一通りある人

 

オペラント心理学入門―行動分析への道 (サイエンスライブラリ心理学 9)

オペラント心理学入門―行動分析への道 (サイエンスライブラリ心理学 9)

 

 

 

新 生理心理学〈1巻〉生理心理学の基礎

著者:

宮田 洋 (監修), 藤沢 清 (編集), 山崎 勝男 (編集), 柿木 昇治 (編集)

目次:

1部 生理心理学とは
2部 脳と行動
3部 中枢神経系の活動
4部 自律神経活動・呼吸活動
5部 視覚―運動系活動・内分泌活動
6部 生体反応測定の留意点

 

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エビデンス 臨床心理学 認知行動理論の最前線

著者:

丹野 義彦 (著)

目次:

第1章 認知臨床心理学のフロンティア
第1部 抑うつの理論
第2章 ベックの認知療法と認知病理学
第3章 抑うつスキーマ論争とティーズデイルの抑うつ理論
第4章 認知アプローチの展開─アナログ研究とメタ分析
第5章 ベック理論への批判と抑うつ研究の最前線
第2部 不安障害の理論
第6章 パニック障害と空間恐怖の認知モデル
第7章 強迫性障害の認知モデル
第8章 対人恐怖の認知モデル
第3部 精神分裂病の理論
第9章 妄想の認知モデル
第10章 幻覚の認知モデル
第4部 まとめと今後の課題
第11章 エビデンス臨床心理学の構築に向けて

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学習の心理―行動のメカニズムを探る

著者:

実森 正子 (著), 中島 定彦 (著)

目次:

1 「学習」について学ぶ
1-1 学習とは
1-2 学習研究の方法
1-3 学習研究はどのように役立つか?
1-4 人間の学習と動物の学習
1-5 生得的行動
1-6 参考図書
2 馴化と鋭敏化
2-1 馴化
2-2 馴化現象を応用した知覚・認知研究
2-3 鋭敏化
2-4 参考図書
3 古典的条件づけ1:基本的特徴
3-1 古典的条件づけの獲得
3-2 刺激般化
3-3 条件づけの保持
3-4 情動反応の条件づけ
3-5 消去
3-6 外制止と脱制止
3-7 拮抗条件づけ
3-8 古典的条件づけに影響を及ぼす諸要因
3-9 参考図書
4 古典的条件づけ2:信号機能\r
4-1 複雑な古典的条件づけ
4-2 古典的条件づけにおける刺激性制御
4-3 刺激の情報価とレスコーラ=ワグナー・モデル
4-4 形態的学習と階層的学習
4-5 条件興奮と条件制止
4-6 随伴性空間と真にランダムな統制手続き
4-7 条件制止の検出
4-8 参考図書
5 古典的条件づけ3:学習の内容と発現システム
5-1 古典的条件づけで何が学習されるか?
5-2 反応の遂行
5-3 古典的条件づけの適応的意味
5-4 参考図書
6 オペラント条件づけ1:基礎
6-1 オペラント条件づけとは?
6-2 歴史的背景
6-3 オペラント条件づけの基礎
6-4 オペラント条件づけの普遍性
6-5 オペラント反応の形成
6-6 参考図書
7 オペラント条件づけ2:強化・消去と罰・強化スケジュール
7-1 強化
7-2 反応としての強化:プレマックの原理
7-3 反応頻度を減少させるオペラント条件づけ
7-4 消去
7-5 罰
7-6 強化スケジュール
7-7 強化スケジュール後の消去
7-8 複合強化スケジュール
7-9 参考図書
8 オペラント条件づけ3:刺激性制御
8-1 弁別
8-2 刺激般化
8-3 参考図書
9 概念学習・観察学習・問題解決
9-1 概念学習
9-2 観察学習
9-3 問題解決行動
9-4 参考図書
10 記憶と学習
10-1 記憶と学習
10-2 短期記憶
10-3 長期記憶
10-4 イメージの記憶
10-5 参考図書
11 引用文献
12 人名索引
13 事項索引
14 執筆者紹介

 

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