よくわかる脳のしくみ
神経科学の一歩目としては最適かもしれない
神経科学の入門書。どちらかというと一般向けに書かれたのではないかというくらいイラスト満載だが、内容はコテコテの神経科学であり、入門書としてはかなり質が高い。
1章では脳の構造と働きとして頭蓋骨や硬膜等の外的な保護システムから始まり脳の発生、成長・エネルギー源といった脳全体の話から、大脳・小脳・脳幹各領域における働きについて大まかに説明している。真面目な話だけでなく、男女の認知能力の違い(研究として
も参照)や脳の文化差、右脳人間と左脳人間といった、一般受けするトピックも多く紹介されているので、この辺りは好みが分かれそう。ただ基本的な内容はしっかり押さえられている。
2章では脳と神経としてニューロンやグリアの基本構造や機能といった神経細胞編、各種神経系や脊髄の基本を紹介している神経系編に分けられる。
3章では五感の感覚の基本が紹介されている。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・痛覚・温冷感覚と、全体を通して詳細に述べられている印象である。
4章では脳と記憶として、いわゆる認知神経科学領域における記憶研究で得られた知見が紹介されている。
5章では脳と睡眠として、睡眠と夢に関するトピックが紹介されている。興味があるものは
も参照するとよいだろう。
6章では脳と心として、感情・評価・性的欲求。ストレス・薬物といったトピックから脳の働きを紹介している。
7章では脳と老化という観点から、脳において老化がもたらす影響や認知症・脳卒中・老化防止というトピックがまとめられている。
ここまで紹介したように、多彩な内容が取り上げられている一方で神経科学を学ぶ上で重要な基礎知識もまんべんなく取り上げられている良著である。欠点は、一つ一つの内容・トピックの紹介が浅い点であるが、本書に求めるのはお門違いという者であろう。学部生はもちろんのこと、今まで神経科学領域の勉強をさぼってきた臨床心理士も読んで損は無い。
おすすめ度:85点
対象者:大学生・大学院生・臨床心理士(入門書)
著者:
福永 篤志 (監修)
目次:
第1章 脳の構造とはたらき
第2章 脳と神経
第3章 脳と感覚
第4章 脳と記憶
第5章 脳と睡眠
第6章 脳と心
第7章 脳の老化と鍛錬