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Rによるやさしい統計学

著者

山田 剛史  (著), 杉澤 武俊  (著), 村井 潤一郎  (著)

 

目次

第1部 基礎編(Rと統計学
1つの変数の記述統計
2つの変数の記述統計
母集団と標本
統計的仮説検定 ほか)
第2部 応用編(ベクトル・行列の基礎
データフレーム
外れ値が相関係数に及ぼす影響
統計解析で分かること・分からないこと
二項検定 ほか)
付録

 

 近年、心理学界隈でも多く用いられるようになってきた統計ソフトRに関する初心者向け解説書。Rの本は沢山あるが、心理学で使われる分析手法に焦点を当てている入門書としては、かなり質の高い部類であろう。

 はじめにRとは何か、そして導入するにはどうしたら良いかを丁寧にインストール画面の画像付きで解説し、簡単な計算や関数についても紹介している。初めの章だけ読めば、Rの導入に困ることは無いであろう。

 2章と3章で平均や分散、標準化といった1変数の記述統計と散布図や相関といった2変数の記述統計を扱う。これらの分析について、Rで計算させながら理論的に説明していくスタイルをとっている。関数や分析だけを行いたい場合は、この辺は飛ばしても良いだろう(もちろん、理論的な部分も知っておくことが重要ではあるが)。

 5章~7章では、無相関検定、カイ二乗検定、t検定、分散分析といった仮説検定の実施方法とその理論的背景について解説している。これらを読めば、基本的な心理統計学的分析の基礎は習得したと言ってよいだろう。

 8章からは応用として、エクセルなどからのデータの読み込み方法(9章)、逆転項目の処理やα係数の算出(14章)、回帰分析(15章)、因子分析(16章)、共分散構造分析(SEM:17章)といった、心理学の研究でなじみ深い手法をRで実施する方法が詳しく丁寧に説明されている。

 

 「今までSPSSを使ってきたが、Rを学びたい」という人は、初めの一冊としてこの本を選んで間違いないように思う。その一方、この本から心理統計学を始めるのはなかなかハードであるように思う。自分が行いたい分析手法のページを読みながら、Rで自分のデータを触るのが一番ベストな使い方かもしれない。

 

おすすめ度:90点

対象者:学部3年程度~研究者(Rを学びたい人)

 

 

Rによるやさしい統計学

Rによるやさしい統計学