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大脳皮質と心―認知神経心理学入門

著者:

ジョン スターリング (著), John Stirling (原著), 苧阪 直行 (翻訳), 苧阪 満里子 (翻訳)

目次:

第1章 脳と心のはたらき
はじめに/脳の研究小史/機能局在論争/分散コントロール/まとめ/読書案内

第2章 脳の構造
はじめに/ニューロン仮説/神経系を分類する/中枢神経系(CNS)/皮質/皮質葉/まとめ/読書案内

第3章 神経心理学の方法
はじめに/脳の構造と機能の測定方法/神経心理学的評価/まとめ/読書案内

第4章 ラテラリゼーション
はじめに/構造的な違い/分離脳症候/脳梁非形成/健常者での非対称/ラテラリゼーションとは何か/脳梁を介した半球情報伝達/脳の体制化と個人差/まとめ/読書案内

第5章 感覚と運動機能
はじめに/体性感覚システム/運動コントロール/まとめ/読書案内

第6章 言語と脳
はじめに/ブローカ失語症/ウェルニッケ失語症/言語のコネクショニスト・モデル/心理言語学的アプローチ/神経生理学的アプローチ/言語とラテラリティー/まとめ/読書案内

第7章 視覚のメカニズムと知覚
はじめに/感覚と知覚/感覚過程-眼から脳へ/知覚過程/物体認知-「何が」のストリームと失認/空間機能と「どこに」のストリーム/空間処理に固有の障害/空間知覚と「どこに」ストリームの評価/まとめ/読書案内

第8章 3つの研究報告
はじめに/研究1/研究2/研究3

 

 

 心理学の入門書シリーズとして評判が高い心理学エレメンタルシリーズの、認知神経科学版。内容は神経科学の基礎から始まり、失語・失行といった高次脳機能障害の紹介が中心である。

 1章~3章では神経科学の基礎として、歴史(1章)や脳構造の基礎(2章)、神経心理学的研究法(3章)について解説している。

 4章からはやや絞ったテーマとして、ラテラリゼーション(いわゆる脳の左右差:4章)、感覚運動機能(5章)について解説を行っている。6章と7章は主に高次脳機能障害を題材に言語と脳(6章)、視覚と知覚(7章)を扱っている。6章では失語症としてブローカ失語ウェルニッケ失語等の失語症に関する基礎知識とその神経メカニズム、7章では視覚系の基礎について解説した後、失認や失行、半側空間無視といった障害の基礎について解説がされている。8章では印象的な先行研究を3つ挙げ、その概要と意義について紹介されている。

 本書を読めば、神経科学および失語・失行に関する初学者的知識は身に着けられる。本書を読んだ後、より詳しい内容を知りたい読者は、神経科学の基礎であれば

madoro-m.hatenablog.com

を、失語症や失認、失行といった高次脳機能障害であれば

madoro-m.hatenablog.com

といった他書を読むことをお勧めする。

 少ないページ数ではあるが、コンパクトに必要な知識が詰まった、神経科学の入門書としては最適な一冊である。基礎研究者志望の学部生はもちろんのこと、臨床心理士を志望する学生も必ず目を通しておくように。神経科学の知識はどの場面に行っても必ず必要である。

おすすめ度:80点

対象者:学部生

大脳皮質と心―認知神経心理学入門 (心理学エレメンタルズ)

大脳皮質と心―認知神経心理学入門 (心理学エレメンタルズ)