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認知行動療法

著者:

坂野 雄二 (著)

 

目次:

第1章 なぜ認知が問題となるか
第2章 何が認知行動療法の発展を引き起こしたか
第3章 認知とは何か
第4章 認知をどのように評価するか
第5章 セルフ・エフィカシーと行動変容
第6章 原因帰属の型と行動変容
第7章 うつ病認知療法
第8章 神経性食欲不振症の認知行動療法
第9章 ストレスと認知
第10章 社会的スキル訓練と認知行動療法
第11章 認地行動療法における患者との関わり方
第12章 わが国における認知行動療法の発展

 

 認知行動療法の基礎理論および具体的な介入法の両輪を解説している、初学者向けの書。特に他書と比較して「認知とは何か」「認知はどうやって測定するか」「自己効力感と行動変容」といったテーマを中心に扱っている。その一方で、各障害の心理モデルやプロトコルに関してはそこまで詳細には書かれておらず、触れられていないテーマも数多い。各障害の心理モデルであれば

madoro-m.hatenablog.com

具体的な認知行動療法の進め方に関しては

madoro-m.hatenablog.com

を読むのが良い。

 

 1章では「認知」がなぜ重要なのかを様々な観点から説明している。2章ではなぜ「認知」を扱うことが重要であるのかを、歴史的な観点から取り上げ説明している。3章では「認知」という概念がどのようなものであるか、認知がどのように症状や行動に影響しているかといった基礎的な概念の説明を行っている。4章では認知の評価法として出版されてきた尺度を取り上げながら、説明している。5章ではセルフエフィカシー、6章では原因帰属と行動変容について、基礎的な理論の説明も含めて行っている。

 7章からは基礎理論から離れ、実践的なテーマに移る。7~9章では各障害に対応する認知行動療法の解説を行っている。取り上げるのはうつ病(7章)、神経性食欲不振(8章)、ストレス(9章)の3つで、それぞれの心理モデルと介入法を紹介しているが、うつ病以外の内容はやや薄く詳細は他書に当たったほうが良いだろう。

 10章では社会的スキル訓練の紹介を行い、11章では患者に認知行動療法を行う上での伝え方や動機づけの高め方といった、具体的なTipsについて紹介している。12章は日本での認知行動療法の現状として、研究の推移等を紹介している(さすがに今となってはやや古いが)。

 本書は、認知行動療法の基礎について、丁寧に語られている良著である。初学者ももちろんであるが、今認知行動療法を実践している者も必ず一度は読むことを勧める。認知行動療法を行っている人の中で「認知」とは何かをわかっている人がどれくらいいるだろうか。本書を読んだうえで、改めて考えていただきたい。

おすすめ度:85点

対象者:学部生・大学院生・臨床心理士認知行動療法に関わる者)

 

認知行動療法

認知行動療法