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自尊感情革命

1章と2章は面白かったけど・・・

自尊感情革命 なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?

  一般向けの自尊感情の解説(批判)書・・・と思いきや、筆者自身が構築した新たな自尊感情モデル(自律的自尊感情)の紹介書。心理学の専門家向けには書かれておらず、おそらく教育関係者や、サラリーマンが主な読者層であろう。

 1章では自尊感情の定義について概説されている。2章では自尊感情のポジティブな効果を示した研究と、それに対する否定的研究の紹介がされている。そして、筆者自身が研究を行っている自尊感情モデルへの導入が少しだけなされている。

 3章では自尊感情モデルの紹介・・・と思いきや、無意識に関する心理学の研究の紹介がされている。内容としてはフロイト・錯視といった定番のテーマから賭け事など広範囲にわたる。そして最後に、その無意識研究の1つとしての自律的自尊感情を紹介している。

 4章では従来の自尊感情の測定が意識に頼ったものであるという批判を行った後、無意識下の自尊感情を測定するための方法として潜在連合テストを紹介し、自律的自尊感情を測定するための潜在連合テストが公開されている。

 5章では筆者が提唱した自尊感情のモデルから、どのようにして自尊感情を伸ばしていくかを教育的な観点から紹介した後、筆者らが行っているプログラムの紹介がなされている。

 

 自尊感情に関する概説書かと思いきや一般読者向けの一冊。今後自尊感情の研究を行ったり臨床的な応用を考えている心理学の専門家であれば、筆者らが本書内で挙げている他書や展望論文を読むほうが良いかもしれない。また、筆者らが行ってきた多くの研究論文を見ていくのも良いだろう。本書の引用部にはあまり紹介されていないため、筆者のHPを参照するとよい。

 

おすすめ度:60点

対象者:教育関係者・一般読者向け

 

自尊感情革命 なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?

自尊感情革命 なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?

 

著者:

 山崎勝之

目次:

第1章 なぜ、学校や社会は「自尊感情」がそんなに好きなのか?
恐怖の管理には欠かせない自尊感情
自尊感情、自尊心、それとも自己肯定感?
学校や社会が「自尊感情」好きな理由
科学的には自尊感情の崇拝神話は終わってよい、はず
本当の自尊感情を救おう!

第2章 「自尊感情」の誕生と死、そして新たなはじまり
自尊感情」の誕生
自尊感情は性格か?自尊感情は一つか?
社会運動にまで成り上がった自尊感情
自尊感情は健康をつくるのか?
自尊感情は社会を健全にするのか?
自尊感情はエリートをつくるのか?
否定的なデータの逆襲、そして総合的検証へ
それでも自尊感情が重宝され続けるのはなぜか?
自尊感情の救世主としての新しい考え方
私たちが発見した新種の自尊感情
ちょっとやそっとでは分からない「自律的な自尊感情」の大切さ

第3章 非意識の世界を見よ!
フロイトは偉かった
ドルフィンか、裸の男女か
貧しいと太った人が好きになる
ストリッパーは排卵期に稼ぐ
なぜ賭け事で身をほろぼすのか?
人間には「自由意志」はない
いったい、意識はなんのため?
ふたたび、自律的自尊感情

第4章 果たして「自尊感情」は測れるのか?
心理学は測定が命
世界でもっともよく使われてきた質問紙
どうやっても自律的自尊感情は質問紙では測れない。では、他律的自尊感情は?
非意識で測ることに切り込もう!
非意識下での連合テストが面白い
潜在連合テストで自律的自尊感情をどう測る?
児童用自律的自尊感情・潜在連合テストを公開します
第5章 「自尊感情」を伸ばす教育と幸せな人生
発達の最初が勝負!
自律的自尊感情を損なう二つの道すじ
これまでの自尊感情教育から見た学校教育の問題
変わり種の新教育、トップ・セルフ
日本人は不幸である
他律的自尊心の権化、タイプA人間の生きざま
子どもたちを全力で守る、 それが親と教師の使命じゃないか
幸せの青い鳥、すべての人に舞い降りよ