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認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第2版 -ジュディス・ベックの認知行動療法テキスト‐

著者:

ジュディス・S・ベック (著), 伊藤 絵美 (翻訳), 神村 栄一 (翻訳), 藤澤 大介 (翻訳)

 

目次:

第1章 認知行動療法入門

第2章 治療の流れ

第3章 認知的概念化

第4章 インテークセッション

第5章 初回セッションの構造

第6章 行動活性化

第7章 第2セッション以降:面接の構造とその進め方

第8章 治療セッションを構造化する上での諸問題

第9章 自動思考を把握する

第10章 感情を把握する

第11章 自動思考を検討する

第12章 自動思考に対応する

第13章 媒介信念をとらえて変容する

第14章 中核信念をとらえ変容する

第15章 その他の認知技法と行動技法

第16章 イメージ技法

第17章 ホームワーク

第18章 終結と再発予防

第19章 治療計画

第20章 治療上の問題

第21章 認知行動療法家としての進歩

付録A 認知行動療法ケース報告書
付録B 認知行動療法のリソース
付録C 認知療法尺度

 

 認知療法創始者のアーロン・ベックの娘、ジュディス・ベックによる認知行動療法の入門書。国内外問わず評価が高く、理論を勉強する者より「実際に認知行動療法を行いたい」あるいは「認知行動療法を行うことになったがどうしたら良いかわからない」という者にとっては、この本から読み始めるのが良いであろう。

 1章では認知行動療法の入門編として、今までの歴史や流れ、現在の研究や認知行動療法を行う上での原則など、基本的な事柄に関する概説がなされている。2章では治療の流れとして、どの認知行動療法セッションにおいても共通する流れや考え方、手法について架空の事例の会話を踏まえたうえで解説されている。3章は認知的概念化として、目の前の患者やクライエントからの訴えをどのようにまとめ、認知行動療法的な観点から概念化していくかが述べられている。

 4章以降では、具体的なセッションの進め方について述べられている。4章ではインテークセッション、5章では初回セッションを扱う。2つの違いについては本書を見てもらえればわかるが、4章はいわゆる受理面接で、5章はセッションの初回、という位置づけになる。6章は行動活性化として、うつ病に対する行動活性化の基礎について解説がなされている。第7章では2セッション目以降のセッションでどのようなことを行っていくかが、具体的に述べられている。8章ではセッションを構造化する上で困難となる事例をいくつか紹介し、その時の対処法を具体例を示しながら紹介している。

 9章からは、技法の解説に移る。9章は自動思考を患者やクライエントがどのように見つけるか、そしてそれを援助するためのセラピストのテクニックについて扱う。10章では同じく感情を患者・クライエント自身がどのように見つけるか、セラピストはどのように援助していくかを扱っている。11章と12章では自動思考を患者・クライエントがどのように検討し、それに対処していくかを扱っている。9章と合わせて、ここでは認知再構成法の具体的手順や、「何を」「どのように」検討していくのが良いのかを丁寧に解説している。13章と14章では媒介信念・中核信念といった、自動思考の検討より一歩進んだ、個人が持っている信念を扱う方法について解説している。15章ではその他の技法として問題解決療法やリラクセーション、エクスポージャー、マインドフルネスといった技法が認知行動療法の中でどのように組み込むことが可能かを説明している。16章ではイメージ技法、17章ではホームワークの解説がなされ、18章は終結と再発予防についての解説である。

 19章では治療計画の立て方、20章ではいくつかの治療上で問題になりやすい点を挙げながら対処法について説明している。21章認知行動療法家として、どのようにスキルアップを図るべきかを解説している。

 以上に述べたように、内容は多種多様、しかし全て認知行動療法を実施する上では重要なものばかりである。この一冊を読破し、全て実践できれば認知行動療法家として初心者の域は超えたと言えるのではないか。ただ、各障害や心理的問題に合わせた見立てなどについてはこの本では述べられていないため、その辺りをカバーするには

madoro-m.hatenablog.com

を参照する必要がある。また、「認知とは何か」や自己効力感・原因帰属理論を使用した手法などを知りたければ

madoro-m.hatenablog.com

を参照のこと。

 しかし認知行動療法の基礎のほぼすべてが詰まった一冊であり、認知行動療法を実施する者は必ず読むべき一冊であることに違いはない。

 

おすすめ度:100点(認知行動療法を行うものは必ず読むように)

対象者:臨床心理士

 

認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第2版 -ジュディス・ベックの認知行動療法テキスト‐

認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで 第2版 -ジュディス・ベックの認知行動療法テキスト‐