WAISのプロフィール分析の話・日本人発達障害サンプル
前回はWISCでしたが、今回はWAISです。
前回記事
ではWISCのプロフィール分析に関する論文を紹介しましたが、今回はWAIS、しかも日本人を対象とした規模の大きい研究を紹介します。
今回扱う論文は
です。つい最近出版されたもので、私もわくわくしながら読みました。論文のタイトル通り、対象者はASD者とADHD者で、どちらもIQが70以上の者のみに絞っています。こ研究では、言語性-動作性の得点差からASDとADHDの特徴を弁別しようとしています。言語性・動作性の概念はWISC-Ⅳでは廃止、WAIS-Ⅲでも使用は非推奨となっています(詳細は
を参照)し、WAIS-Ⅳでも廃止の予定ですが、解釈できる可能性があるということなんですね。私自身、今まで割と軽視していましたが、再考の余地はあるかもしれません。それでは見ていきます。
序論
・大人のASDとADHDは鑑別が困難な場合が多いが、WAISはもしかしたら鑑別に有用であるかもしれない。
・特に言語性から動作性を引いた値が使えるかもしれない。しかしASDの若者は動作性よりも言語性のほうが高いという研究もそうでない研究もある。また、ADHDでもPIQが低いという研究もある。
・ASDとADHDともに処理速度因子の得点が低い。その一方で、知的に遅れのないASD者は高い言語能力を有し、ADHD者よりも言語理解因子の得点が高い。
・作動記憶因子はADHD者の得点がASD者より低い。ADHD者はワーキングメモリーに大きな問題を抱えていることが多いため。
方法
対象者:
196名の外来患者(ASD: n = 120・平均年齢 29.6 ± 8.3、ADHD: n = 76・平均年齢 30.3 ± 9.6)でFSIQが70以上の者
結果
(2つの図とも本論文(Kanai et al., 2017)から引用)
・両群とも言語性>動作性で、特にASD者のほうが差は大きい(d = 0.50)
・言語理解と作動記憶は ASD者>ADHD者(d = 0.32、d = 0.35)
・算数・数唱・知識は ASD者>ADHD者 (d = 0.35、d = 0.40、d = 0.46)
個人的感想
前回記事
で紹介したWISCのプロフィールと比べて、かなり異なるプロフィールですね。例えばASDに特徴的な理解の落ち込みと積木模様の高値が見られません。その一方で、両群ともに符号が低い、ADHD者は作動記憶が低いというように、同じ傾向を示すものもあります。これがWAISとWISCの差なのか、文化差によるものなのかはまだわかりませんが、解釈する上で貴重なデータであることに間違いはありません。また、言語性と動作性の概念が生きているWAIS-Ⅲでは、解釈材料として使う余地があるかもしれません。