睡眠障害に対する認知行動療法:行動睡眠医学的アプローチへの招待
著者:
マイケル・L・ペルリス (編集), マーク・S・アロイア (編集), ブレット・R・クーン (編集), 岡島 義 (翻訳), 福田 一彦 (翻訳)
目次:
1章 不眠症の行動睡眠医学的介入プロトコル
2章 睡眠制限療法
3章 刺激制御療法
4章 睡眠衛生
5章 不眠に対するリラクセーション
6章 睡眠圧縮療法
7章 逆説志向療法
8章 行動実験
9章 睡眠に関する非機能的な信念を軽減させる介入
10章 誤認を減少させる介入
11章 安全確保行動に対する介入
12章 睡眠に関する非機能的な信念と不眠に対する認知療法
13章 認知再構成法:睡眠に関する破局的な信念に対する認知療法
14章 集中的睡眠再訓練法:原発性不眠症に対する条件づけ療法
15章 不眠症に対するマインドフルネス療法
16章 不眠症に対する簡易行動療法
17章 不眠症の治療における高照度光の使用
18章 動機づけ増強療法:陽圧呼吸療法(PAP)の
使用アドヒアランスの動機づけ
19章 ナルコレプシーに対する補完治療:計画的な睡眠確保
索引
監訳者あとがき
日本の書籍では珍しい、不眠の認知行動療法の本。期待して読んだのであるが、やや期待外れであった。その理由は本書における基礎的な理論・概論の不足にある。
1章では不眠の認知行動療法研究の概論を扱っているが、特に各論や前提知識に踏み込むわけでもなく、本当にただの概説である。ほぼ序章と言っても良いだろう。2章以降で具体的な不眠に対する介入法が紹介されているが、2章から19章までただプロトコルがあるだけ。各プロトコルで初めに適応や禁忌が載っており(これはとても重要)、その後2~3ページ理論の解説を行った後、その治療・介入法の具体的な進め方に入る。つまりその介入法の歴史や概念的枠組みといった内容はほとんど書かれていない。その後のプロトコルは詳細に書かれており、治療者と患者の問答まで記載されている。このため、初心者が読むと「どのようにやるか」はわかった気になるが「なぜそのような手続きをとるのか」はさっぱりわからない。
あとがきには「初学者にもぜひ手にとってもらいたいとの願いから、原著の39章から19章を厳選」と書いているが、これでは「不眠への認知行動療法は介入プロトコルをそのまま使えばよくて、理論や知識はいらないよ」と言っているのも同然である。ある意味で、理論や基礎研究を軽視する、現在の認知行動療法の流れを代表しているかのような一冊であった。省かれた章に理論的な解説があるのではと思い原著の目次も見てみたが、この本は元々介入プロトコル集であるらしい。そのため、省かれた章もほとんど本書同様のプロトコル章なようだ。洋書では睡眠や不眠の基礎知識や認知行動的枠組みを紹介した書が多くあるため、その応用編としてこのような書籍も必要であろう。しかし、今の日本ではどうだろうか。
フォローしておくと、ある程度睡眠や不眠に関する知識がある者で、かつ不眠への介入を行いたい者であれば、本書はとても重要なものになるだろう。具体的な手続きだけでなく、うまくいかなかったときのための修正案や、介入で使用するワークシートの例も記載されており、実務上はかなり有益である。そのため、まず不眠の基礎理論について
の介入章をあらかじめ読んだ上で本書を読むことを薦める。この本は睡眠に関する基礎的な説明がふんだんに盛り込まれているため、その後に本書を読めば理解度や実践応用度がかなり高まるように思う。
おすすめ度:55点
対象者:臨床心理士(睡眠問題にある程度知識がある者のみ)
睡眠障害に対する認知行動療法:行動睡眠医学的アプローチへの招待
- 作者: マイケル・L・ペルリス,マーク・S・アロイア,ブレット・R・クーン,岡島義,福田一彦
- 出版社/メーカー: 風間書房
- 発売日: 2015/09/30
- メディア: 単行本
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