エビデンス・ベイスト心理療法シリーズ 児童虐待
やはりこのシリーズは物足りなさしか残らない
エビデンス・ベイスト心理療法シリーズの児童虐待編。本シリーズの特徴を一言で言うと「物足りない」の一言である。シリーズのどれをとっても近年の認知行動的な内容をふんだんに詰め込んでおり、認知行動療法を行う者であれば必要な事柄ばかりであるのだが、概要もあっさり、理論もあっさり、介入もあっさり、という調子で、「いやいやもう少し書いてよ!」という感想のまま終わっていく。本書を読んだ後もその感想は変わらなかった。
1章では児童虐待の概要として、虐待の種類や養育者に関する研究、虐待の診断基準や疫学、虐待によって生じる様々な問題について紹介されている。
2章では虐待によって生じる問題行動を説明する理論としてPTSDモデルと社会的認知的情報処理モデルが紹介されているが、どちらも1ページ程度の分量であり、これでは理解できるできない以前の問題である。これらを理解したい読者は、引用元の文献を読む必要がある。特にHPA系と虐待に関する記述は興味深いものだけに、この分量の少なさは大変もったいない。
3章では虐待によって生じることの多い問題としてうつや自殺などの精神的な問題と行動上の問題が紹介されている。しかし診断基準をただ載せただけのようなものばかりであり、虐待に特異的な内容もおまけのように載っているが、いかんせん少なすぎる。
4章ではアセスメントと治療として、児童とその親への介入としてはトラウマ焦点型認知行動療法、青年への介入としては弁証的行動療法が紹介されている。5章ではそのトラウマ焦点型認知行動療法を使用した事例が1つ紹介されている。
付録として児童虐待のアセスメントツールが2つ紹介されている。
ここまでの書評を読んでわかるように、とにかく内容が少なすぎる。認知行動的な虐待の理解・支援に関する和書はかなり少ないため貴重な一冊ではあるのだが、残念ながら、おすすめは出来ない。
おすすめ度:30点
対象者:臨床心理士
- 作者: C・ウィカール,A・L・ミラー,D・A・ウルフ,C・B・スピンデル,貝谷久宣,久保木富房,丹野義彦,福井 至
- 出版社/メーカー: 金剛出版
- 発売日: 2012/04/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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