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入門 問題行動の機能的アセスメント

 行動分析学の基礎はわかったけど、実際どうやって応用するのよ?て思っている人にピッタリの一冊

入門・問題行動の機能的アセスメントと介入

  応用行動分析学における実践的な機能的アセスメントと介入に焦点を当てた一冊。54ページと薄い本だが内容はとても濃い。応用行動分析学を実践する者はかならず知っていなければならない内容ばかりである。行動分析学の入門書では無いため、入門的知識は理解していないと実践に活用するのは難しいだろう。目安としては「分化強化」という語を何の参照もなく説明できる程度の知識があるかどうか、というラインが丁度いいかもしれない。

 初めに応用場面における強化子の種類について述べられている。これらの分類はあくまで便宜上であるが、応用場面では問題行動に繋がりやすいものばかりである。次に機能的アセスメントの種類として3つの手法が詳細に述べられている。よく「機能的アセスメント」の意味で「機能分析(機能的分析:functional analysis)」と言う人がいるが(認知行動療法系で広まっている誤用である)、本文を読みその違いを明確に理解してほしい。「分析」することはそんなに楽ではない。最後に機能的アセスメントに基づいた介入法として「確立操作」「消去」「分化強化」の3種を用いた例を問題行動が維持されている強化子別に紹介している。

 本書は薄く持ち運びにも便利で、実践場面で困ったときにすぐに参照できることも利点であろう。本書の内容をより深く学びたい人は

 

行動変容法入門

行動変容法入門

  • 作者: レイモンド・G.ミルテンバーガー,園山繁樹,野呂文行,渡部匡隆,大石幸二
  • 出版社/メーカー: 二瓶社
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 単行本
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 がおすすめである。また、基礎的な行動分析学の知識は

 

madoro-m.hatenablog.com

 でカバーするのが良い。

 臨床心理士も必ず一読しこの程度の内容は理解しておくように。特に発達領域で働く者は「行動分析学とか難しくてわからない」とか言っている場合ではないぞ。

 

おすすめ度:88点

対象者:大学院生~臨床心理士

 

入門・問題行動の機能的アセスメントと介入

入門・問題行動の機能的アセスメントと介入

 

著者:

James E. Carr (原著), David A. Wilder (原著), 園山 繁樹 (翻訳)

 

 目次:

問題行動を維持している強化(正の社会的強化
負の社会的強化
正の自動強化 ほか)
問題行動の機能的アセスメント(情報提供者によるアセスメント
記述的アセスメント
実験的分析)
問題行動への機能的介入(行動の型に基づく介入と行動の機能に基づく介入
行動の機能に基づく介入
正の社会的強化によって維持されている問題行動への介入 ほか)