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やさしくわかる! 愛着障害―理解を深め、支援の基本を押さえる

愛着障害の基本を知るには良い一冊であろう。

やさしくわかる! 愛着障害―理解を深め、支援の基本を押さえる

  前半では愛着障害の基本が紹介され、前半では愛着障害の基本としてよく見られる行動の傾向やよくある愛着に関する誤解、発達障害との違いと併存について多く書かれている。後半では著者が提唱する「愛情の器」と呼ばれる考え方と愛着修復プログラムについて紹介されている。

 初めのプロローグでは、本書に書かれている内容のまとめが書かれている。愛着障害について詳しくない者であれば、この章を読むだけでもかなり勉強になる。買うかどうか迷っている場合は、この章を読んでみて判断するのも良いかもしれない。

 1章は愛着障害の基礎が紹介されている。1節では愛着障害の基本と「愛着」という視点で不適応行動を理解することの重要性が紹介されている。現在、子どもの不適応行動を発達障害として捉えることが多いと思うが、その現状に一石を投じる内容である。2節では愛着の基礎を「安全機能」「安心機能」「探索基地」の3つに分け、それぞれの重要性と獲得されるまでの道のりが書かれている。内容としては基本的な内容であるが、不適応行動との関連をここまで述べられている書は少ないのではないか。3節では愛着障害を見分ける行動上の特徴が13個紹介している。この13個の詳細については本書を見てほしいが、実際に子どもに接している者であれば、対応が難しい子どもに当てはまる確率がかなり多いことに気づくのではないだろうか。4節では愛着に関する誤解として6つ紹介されている。

 2章では愛着障害の子どもに対する支援方法について書かれている。1節では愛着障害を持つ子どもへの不適切な対応が書かれている。単純に褒めたり叱ったりするだけでは適切ではないこと、そしてその理由が書かれている。2節では筆者が提唱する愛情の器モデルについて紹介されており、3節ではこの愛情の器モデルに基づいた愛着修復モデルが紹介されている。この4節が本書の中心であり、学校で行える愛着障害を持つ子どもへの具体的な支援方法について書かれている。キーパーソンの決定や感情に対する支援の重要性が紹介されている。5節では学校の中で行える支援として、どのようなクラス運営を行うのが良いかが紹介されている。6節では保護者や親に対する対応について触れられている。3章では発達障害愛着障害を併存している場合の対応法について触れられている。

 

そこまで厚くなく平易な語り口で書かれている一冊であるが、内容としてはかなり重要なことが書かれている。学校現場で支援を行う者や子どもを対象として支援を行う者は必ず読んでおくと良い。

 

おすすめ度:90点

対象:学校現場や子どもに対する支援を行う者

 

やさしくわかる! 愛着障害―理解を深め、支援の基本を押さえる

やさしくわかる! 愛着障害―理解を深め、支援の基本を押さえる

 

著者: 

米澤 好史

 

目次:

プロローグ まずは15分でわかる! 愛着障害の理解と支援

第1章 愛着障害の理解を深める
1「愛着」という視点から見えてくるもの
2 愛着形成のメカニズムと3つの基地機能
3 愛着の問題を抱えるこども発見のための13のポイント
4 愛着(障害)の6つの誤解

第2章 愛着障害のこどもをどう支援するか
1 愛着障害への不適切な対応
2「愛情の器」モデルとは
3「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム
第1フェーズ:受け止め方の学習支援
第2フェーズ:こども主体・大人主導の働きかけ
第3フェーズ:他者との関係づくり
第4フェーズ:自立のための支援
4 愛着形成・修復の支援が成功するためのコツ
5 愛着の問題に対応できるクラスの風土づくり
6 愛着に問題を抱えるこどもの保護者・親への基本的な対応

第3章 発達障害愛着障害を併せ持つこどもの支援
1 発達障害愛着障害を併せ持つこどもの支援の基本
2 対応に困る場面から学ぶ、発達障害愛着障害を併せ持つこどもの支援

おわりに