学校でフル活用する認知行動療法
柔らかい語り口。SCなどだけでなく、子どもを対象に認知行動療法を行う者は是非。
学校場面でどのように認知行動療法を実施していくかが、柔らかい語り口で語られている本書。本書で紹介されている内容が現実的なものである上に、認知行動療法の基礎をどのように応用していくかが述べられている。教科書的な書籍であると実践への応用が難しい場合もあるが、本書はその辺がうまく述べられている。
1章ではリストカットの事例を元に機能分析の考え方を紹介している。2章と3章ではより深く事例を述べていきながら、会話の中で代替行動を強化していく方法が述べられている。面接の失敗例として挙げられている「つっこみを入れることが出来ない」「口をはさめない」といった点は心当たりのある者が多いのではないだろうか。
4章では認知行動療法のエッセンスとして」6つの観点を挙げ、特に行動分析学的な観点から、どのように行動変容を促していくかを紹介している。
5章と6章では不登校の事例から、エクスポージャーの基礎的な知識とその導入法について解説されている。セラピストにもエクスポージャーが必要というのはまさにそうであろう。7章では強迫性障害(強迫症)の介入としての曝露反応妨害法について述べられている。
8章~10章ではSSTの基礎と応用として、学校場面で集団を対象にSSTを行う際の基本と実践法が述べられている。
11章と12章では認知の変容テクニックとして、どのような手続きを経て変容させていくか、そしてセラピストはどのように立ち振る舞えばいいのかが丁寧に解説している。
最後に参考図書が多く紹介されている。
本書を通して「学校場面や子どもに対して認知行動療法(というよりは行動分析学)をどう実践するか」に焦点が当てられている良著である。認知行動療法の基本はあまり触れられていないので、予め
などで予習しておくことを勧める。
おすすめ度:88点
対象者:臨床心理士
著者:神村栄一
目次 :
1.「変える」ではなく「変わりやすくする」のが認知行動療法
2.問題行動の「効果(機能)」にどう迫るか
3.「解決志向の三角形」をつくってみよう!
4.認知行動療法 虎の巻
5.ちょい先の「未来予想図」が支援を導く
6.エクスポージャーが効くそうじゃぁ?
7.「意味のない考え(強迫観念)」から楽になる方法
9.実況中継「教室で行う生徒間トラブルのSST」
10.実況中継2「教室で行ういじめ予防のSST」
11.「認知の変容の技法」にチャレンジ
12.「自分取り扱いマニュアル」の作成を支援する
附録 認知行動療法おすすめ図書