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よくわかる発達心理学 第2版

発達心理学の勉強、スルーしがちですよね

よくわかる発達心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

  入門書として質の高い本が多いミネルヴァ書房「よくわかる」シリーズの発達心理学版である本書。他に漏れず発達心理学内の幅広いテーマをカバーしており、発達心理学の入門書としては良著である(網羅性を重要視した結果、1つのテーマの記述がかなり薄いのも他と同様である)。

 子どもに対して検査を取る者、そして子どもの患者・クライエントを持つ心理士は、どのオリエンテーションであるに関わらず必ず発達心理学の知識を持っておかねばならない。発達に遅れや問題があるのか、といった点を評価する際に「多くの子どもが辿る発達」を知らずして、どのように評価できるだろうか。

 1章では胎児期と新生児期のトピックとして、新生児の弁別能力や学習能力、気質といった点が解説されている。特に「ヒトが生得的に持つ力」に焦点をあてた記載が多い。2章では乳児期のトピックとして人見知りや微笑、模倣や言語の獲得といった内容が解説されている。3章では幼児期の前期として、言語発達、表象・象徴、遊びや愛着といった点の記載が多い。通常こういった話題ではピアジェについての紹介がなされることが多いと思うが、本書では1~3章の間では出てこない。4章では幼児期の後期として子どもの論理性の獲得(ピアジェ初登場)や数概念の獲得、言語使用の上達や遊び・学びの変化などの内容が紹介されている。5章では児童期として計算・読み書き能力の発達や学校・友人関係のトピック、学習方略といったトピックが紹介されている。

 6章では青年期として、友人関係や性的な変化、自己や将来についての悩みといったトピックが紹介されている。7章では成人初期・中期として、アイデンティティや恋愛・結婚、子育てといったトピックが紹介されている。8章では成人期後期・老年期として子離れや退職後の変化、高齢期の健康、死といったトピックが紹介されている。

 9章からは応用的なテーマへと移る。9章では発達の援助として虐待・不登校・子育てのストレスや発達障害といったトピックについて解説がされている。10章は発達全体の観点から、発達精神病理学や性格の変化、生涯発達、発達の文化差といったトピックが紹介されている。

 他の「よくわかる」シリーズと同様、一つのテーマについての記述が薄く、本書を読んだからと言って実践に役立たせることは難しいだろうし、発達心理学の理解が深まるということは無いかもしれない。ただ初学者の入門書としては良著であると思う。初めにこれを読んでから、興味あるトピックの書籍に移るのが良いだろう。

 

おすすめ度:75点

対象者:学部生・大学院受験(発達心理学初学者向け)

 

よくわかる発達心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

よくわかる発達心理学 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)

 

著者:

無藤 隆 (編集), 大坪 治彦 (編集), 岡本 祐子 (編集)

目次:

1 胎児期・新生児期
2 乳児期
3 幼児期前期
4 幼児期後期
5 児童期
6 青年期
7 成人初期・中期
8 成人後期・老年期
9 発達を援助する
10 発達を考える際に